1円玉,1個のボール,1人の男性,ソーセージ1本
なんて説明してくれる人がいますが,全部,単位がついちゃっていますね.
「1そのもの」の説明にはなっていないようです.
だって,この世に,「1そのもの」は存在しませんから!
記号としての「1」は存在していますが,これで「1そのもの」を表しているわけではありません.
「1」は,概念の世界にだけ存在するものなんですね.
自然数を定める基準となる最小の単位として「1」という概念があるとして,
1の次の自然数が2
その次の自然数が3
・・・・
と定義されていくのです.
“次” とうのは “+1” に対応していて,
1の次は2 ☞1 “+1”=2
2の次は3 ☞2 “+1”=3
・・・・
となっています.
う~ん,ややこしいですね(笑)
「1」には,掛け算においても特別な働きがあります.
自然数の掛け算は,
2×3=(2を3個足したもの)=2+2+2=6
3×2=(3を2個足したもの)=3+3=6
といった風に考えるのでした.
結果的に,「2×3」と「3×2」は一致するのでした.
では,1×2=?
(1を2個足したもの)=1+1=2
ついでに,2×1=?
1×2と同じだから2,と答えても構いませんね.
1は,何に掛けても,相手の数を変えない唯一の存在,と考えることもできます.
ちょっと分かりにくいですよね?
要するに,こういうことです.
1×●=●
〇×1=〇
●や〇には,どんな数が入っても構いません.
何にかけても,計算結果は,相手の数(●や〇)そのままなのです.
「何に掛けても相手の数を変えない」というのは,こういう意味です.
“×1”という計算操作を施しても,“何も変わらない”のです.
逆数を考えるときに,「積が1になるもの」としました.
2の逆数は,1/2
2/3の逆数は,3/2
「1」の偉大さがちょっと見えてきますね.
「何に掛けても相手の数を変えない」というのは分かってきました.
でも,「唯一」って,どうして分かるんですか?
はい!とても良い質問ですね(自作自演)
最後にこれを考えて終わることにしましょう.
狐につままれたような気分になるかも知れませんが,頭の体操と思ってご覧ください.
「何に掛けても相手の数を変えない」数として「1」があるわけですが,他にもそんな数があったら,何が起こるでしょう?
Aは,「何に掛けても相手の数を変えない」数であるとしましょう.
「A=1」であることを証明したいのです(そうすれば,「何に掛けても相手の数を変えない」数は1だけだ,と分かります).
Aも数なので,Aに「1を掛けても」何も変わりません.
A×1=A ……①
一方,1に「Aを掛ける」とどうなるか?とも考えることができて,
1×A=1 ……②
掛け算の性質から,A×1と1×Aは同じ数を表すのでした.
ということは,①と②の左辺が同じ数を表すから,右辺同士も同じ数を表していることになります.
「2つの数は,ある同じものと等しいことが分かれば,等しいと分かる」というのは,数学の原則.つまり,
x=y,z=yが分かれば,x=zが分かる
という論証は,正しいと認められています.
だから,①,②と「A×1=1×A」を合わせて,
A=1
が分かるのです.
「何に掛けても相手の数を変えない」という性質は,「1」のみが持っているもので,これが「1」を特徴づけるものなのです.
1×1×1×・・・×1=1
1は何回掛けても,1のまんま.
こんな素敵な数は,他にありません.
いくら掛けようが,相手をまったく変えない,とっても優しいヤツなんです(笑)