統計って,色んなことを「仮定」して理論を組み立てています.
だから,誤用するとあり得ない推測をすることになりますし,「統計なんてあてにならないんじゃない?」といった誤解を招くこともあります.
・選挙速報で,開票率1%で「当選確実」とか出して大丈夫なの?
・テレビの視聴率,900件ほどの調査だとか.そんな件数なのに,視聴率の小数点以下の上下動に一喜一憂するのって,意味あるの?
1つ目は,1%でも,それなりの人数だったら,問題ない!
2つ目は,まったくの無意味!
いまの中学1年生の学年から,高校数学Bで,統計が必須になります(代わりに,文系はベクトルが不要になります!).
社会に出て役に立つ数学の第1位ですが,応用面が重視されるから,理論を愛する数学の先生からは敬遠されがちな分野.
これまで教えたことがない先生がほとんど.
あと数年で,数学教育界の構造改革が起こるんです.
ということで,ちょっと統計のネタです.
今年も大学入試センター試験が行われました.
2021年から「大学入学共通テスト」になるので,センター試験としては最後の実施でした.
(大学入学共通テストは,大臣の「身の丈」発言で話題になって,英語民間試験・記述式が延期になったテストで,一時期ニュースを騒がせましたね)
特に数学IAは,センターっぽくない問題がいくつか出題されて,対策していない受験生にとってはしんどいものになったかも知れません.
(詳細は過去記事参照ください)
↓
そのため,平均点は51.88点で,例年よりも8点ほど低くなりました.約2問分.
38万人が受験したので,約76問分の×が増えたことになります.そう思うと,スゴいですね.
ところで,センター試験の平均点は,一度,中間発表がなされます.
今年は,約半数の16万人分の段階で途中経過が発表されました.
53.25点(標準偏差は18.73).
最終結果はこれより1.37点低くなりました.
「まぁ,そんなモンじゃない?」
と思うでしょうか.
いえいえ,そんなこと,無いんです!
実は,統計の理論を使うと,16万人の平均が全体の平均と比べて1.37点も低くなる確率は,天文学的に小さな値になります.
0.00・・・1%といった感じです.
最後のセンター,統計的に起こりえないようなレアな出来事が起こったのでしょうか?
いえいえ,実は,毎年これくらいズレますし,他の科目も同じようにズレます.
だいたいの科目で中間発表より最終発表の方が低くなっています.
国語だけ,なぜか高くなっている(ナゾ・・・)!!
何が起こっているのでしょう?
結論を言うと・・・
天文学的に確率が低くなる計算の前提として,「16万人を“無作為に”抽出している」という仮定があるのです.
おそらく,センターの採点は,無作為に選んだ16万人ではなく,会場単位や都道府県単位で分けてマークシートの読み取り結果を集計しているはずで,データがかなり偏っていると考えられるのです.
だから,無作為を仮定した統計理論を適用したらダメなんですね.
公式丸暗記ではなく,適用条件などの理論も学んでおかないと,実用的にも困ることがあるんですね.
正しく勉強できるチャンスが,世の中のみなさんに届きますように.