Mr.∅の数学と古美術

数学講師が語る数学と古美術、「数学語」・「数学的文法」で日本の数学教育を変えたい!

「絶対値と言えば“場合分け”」という誤った思い込み

 絶対値について,

www.phi-math.com

 で少し扱いました.
書ききる前に力尽きてしまいましたので,今回は,絶対値だけをテーマにして書いてみようと思います.

 

「場合分け」と「定義域の分割」を混同してはならない

という話です.

まず,こんな問題を考えてみます.

―――――――――――――

 aを0でない定数とする.xの方程式:ax=|a|を解け.
 ただし,絶対値の記号を用いてはならない.

―――――――――――――

これは,aという文字定数に絶対値がついています.
文字定数には,数値を指定することができます.
そして,その都度,xの方程式を解くことになります.

例えば,a=2と指定すると,
 2x=2 ……①
を解くことになります.
この等号を成り立たせるような未知数xを求める問題です.
2倍すると2になる数を答えるので,x=1になります.
実際,x=1のとき,
 (①の左辺)=2×1=2
だから,右辺と一致しています.
等号を成り立たせる数,ということです.

例えば,a=5と指定しても
 5x=5 ∴ x=1
ですし,a=100を指定しても
 100x=100 ∴ x=1
です.
aの値に関わらず「x=1」が解であるなら,そのようにまとめて答えてしまえば良いのです.

しかし,そこまで甘くはありません.

a=-2を指定すると
 -2x=2 ∴ x=-1
となるようです.
a=-3でもa=-10でも,x=-1になります.

どうやら,aが正であるか負であるかによって,答えが「x=1」だったり「x=-1」だったりするみたい.
だから,そのように「場合を分けて」答えます.

 a>0のとき,x=1
 a<0のとき,x=-1

 

これを,「x=±1」と答えるのは間違いです.

±1は,x=1もx=-1も解になる方程式を考えている,ということになります.
例えば,
 x^2=1 ……②
の解が
 x=±1
です.
x=1でも,x=-1でも,
 (②の左辺)=1-1=0
となって,右辺と一致します.だから,両方とも解です.

これが,「場合分け」.

 

一方,こんな問題もあります.

 

―――――――――――――

xの方程式|2x-3|=xを解け.

―――――――――――――

 |2x-3|=x ……③
の等号を成り立たせるようなxをすべて求める問題です.
未知数のxを含む式に絶対値が付いています.

先に答えを言うと,
 x=1,3
が解になります.
x=1のとき
 (③の左辺)=|-1|=1
 (③の右辺)=1
x=3のとき
 (③の左辺)=|3|=3
 (③の右辺)=3
で,確かに両方とも解です.

 

では,これは,どう考えることになるのでしょう?

|2x-3|は,xの値によって,
 2x-3
であるか,または,
 -2x+3
であるか,のいずれかです.
前者はx≧3/2のとき,後者はx<3/2のときです.

この場合は,実数全体の中から,③を満たすxを探すのですが,
「x≧3/2の中で探した解」と「x<3/2の中で探した解」のいずれもが解になります.

x≧3/2において,③は
 2x-3=x かつ x≧3/2
である.2x-3=xを解くと,x=3(x≧3/2の範囲に入っているから,OK)

x<3/2において,③は
 -2x+3=x かつ x<3/2
である.これを解くと,x=1(x<3/2の範囲に入っているから,OK)

以上から,(実数全体の中で探したら)解はx=3,1

どうでしょう?
「場合分け」との違いはわかりますか?

xを考える範囲(実数全体)を,2つに分割し,それぞれの範囲で答えを探しました.
全体としては,分けて答えるのではなく,すべての解を列挙することになります.
これを「定義域の分割」と呼んだのです.

分けて考えることを,何でも「場合分け」と呼ぶ風潮があるように思います.
これは,大きな混乱を生んでいるのではないかと,思っています.

ぜひ言葉遣いには気を付けてください!

 

 

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