Mr.∅の数学と古美術

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2020年・京都大学の数学・理系・第1問

京都大学の数学シリーズです.
今回は,理系の第1問.
難化したと言われる2020年の京大数学.
どんな問題なのでしょうね?
この問題は,全体の中では,解法判断に迷う要素は少ないので,解きやすい方です.
とはいっても,難化した京大の理系数学の中で,ですが.

※「基本事項は身についている」という前提での解説です.

 適宜,図を補いながら読んでもらえると有難いです.

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a,bは実数で,a>0とする.
zに関する方程式
 z^3+3az^2+bz+1=0    (*)
は3つの相異なる解を持ち,それらは複素数平面上で一辺の長さが(√3)aの正三角形の頂点となっているとする.このとき,a,bと(*)の3つの解を求めよ.

―――――――――――――

複素数平面上で正三角形αβγと言えば?
一般的には,
 (β-α)/(γ-α)=1/2±(√3)i/2
でしょう.
今回は,3次方程式の解,という情報があるので,共役複素数の“特殊性”を使いながら,正三角形についての確定情報を探すのが良さそうです.

ということで,キーワードは,「方程式の解」です.
ここから連想できる解法は
 1)解く
 2)グラフを利用
 3)解と係数の関係
 4)解の定義
です.

文字が2つも入っているので,「1)解く」は無さそうですね.
「解であるという条件」を代入で処理する4)の解法も,フィットする感じはしません.

では,「2)グラフ」はどうでしょう?
異なる3つの解,と言ってはいますが,
 あ)実数が3個,虚数が0個
 い)実数が1個,虚数が2個
のいずれのパターンかは不明です.
パッと,グラフは考えられません.
しかし・・・

 あ)の場合,3つの解を図示すると,すべてx軸上に

 あって,三角形の頂点にはならない.
 だから,あ)は考える必要がない.

となります.

 

ということで,グラフを考えてもあまり意味のない,い)のパターンのようです.
3つの解は,
 x=p(実数),α,β(βはαの共役複素)
となります.

結局,「3)解と係数の関係」という線が濃厚になります.
実際,2)の場合,虚数の2個は,互いに共役で,x軸について対称になります.


解と係数の関係から,
 p+α+β=-3a …………1
 pα+pβ+αβ=b ……2
 pαβ=-1 ……………3
です.
とりあえず,ここまでは進めて欲しいところでしょう.

さて,ここで,1辺の長さが分かっているから,虚数解α,βの虚部は,±(√3)a/2と分かります.
さらに,虚数解の実部は,正三角形の高さ(3a/2)を考えることで分かります.
つまり,実部は
 p-3a/2 ……①
または
 p+3a/2 ……②
です.

①のとき,
 p+α+β=3p-3a
で,1より,これが-3aだから,p=0です.
このとき,3は成り立ちません.
つまり,123を満たすxは存在しません.

よって,②を考えればよいことになります.


ここまでで,かなり進みました.
いつもの京大なら,これくらいで答えに到達するのですけど,この問題は,まだゴールが見えていません・・・


1から,
 3p+3a=-3a ∴p=-2a
これで,α,βは
 -a/2±(√3)ai/2 つまり a(-1/2±(√3)i/2)
と分かって,
 α+β=-a,αβ=a^2
3から
 -2a*a^2=-1 ∴ a=1/(2の3乗根)
2から
 -2a(-a)+1/2a=b ∴ b=3/(4の3乗根)
そして,3つの解は
 -(4の3乗根),(-1/2±(√3)i/2)*{1/(2の3乗根)}
と分かります.

以上が,2020年京大理系数学の第1問でした.