「横浜国立大学は二次試験を実施しないらしい」
そんな情報が話題になっている.
横浜国立大学と言えば,関東では
東大
東京工業大,一橋大
に続く最難関大学.
その横浜国立大が,大学独自で作成した問題で合格者を選別する個別入試を行わず,センター試験の後継「大学入学共通テスト」の点数で合否を決めるのだ.
共通テストの得点を,個別学力試験(二次試験)の得点として換算する.
最難関大学の合否判定に共通テストが使えるはずがない
という“常識”が大学入試改革を骨抜きにしてきた過去を踏まえると,今回の決断の意味はとても大きい.
海外の大学は大学ごとの個別入試を実施している国などなく,日本お得意のガラパゴス化現象なのだ.
しかし,ガラパゴス化した入試制度でないと,(私も籍を置いている)大学受験教育サービス業界が立ち行かなくなる.
今回の横浜国立大の大英断が,大学受験業界の再編につながる可能性もあるのだ.
本来の大学入試改革は,
1)共通テストで既存二次試験の一部を代替
2)各大学は,教科学力だけではなく総合的な評価で合格者を選別する,
いわゆる丁寧な入試を実施
3)学力不問のAO入試(新名称:総合型選抜),および,
指定校推薦(新名称:学校推薦型選抜)を改善
という3つの柱があったはず.
それが,1)での
「記述式の実施と採点の業者委託」
「英語4技能の外部検定利用」
のみが取りざたされ,これらを中止させて,もはや話題に上らなくなった.
外部検定利用を前提に考えられている共通テストの英語の問題は・・・
興味がおありなら,大学入試センターのサイトから「試行調査」の問題をご覧いただきたい.
英語は置いておいて・・・
1)を目指し,共通テストの問題は,センター試験と比べると難化している.
平均6割を目指していたセンター試験とは設計が違う.
解法の丸暗記だけでは解けないような数学の問題も多く,大きく差がつく問題になる.
特に,数学は学力の差が大きく現れる科目である.
とことん嫌いな人が圧倒的に多い一方,その世界でしか生きていけないほどどっぷりつかってしまう(私のような)人も多くいる.
センター試験の数学では,多くいる満点以上の人の評価ができなかったのだ.
だから,難問を出題する2次試験が必要なのだ.
共通テストは,中堅大学の標準的な問題を,各大学がわざわざ作って試験をする必要をなくしてくれる.
各大学で行う個別入試と違い,50万人ほどの受験者がおり,学力の判定には申し分ない.
各大学が無理して二次試験の問題を作る必要なんて,無いのである.
そういうのを求めているのは,入試問題マニアも多い大学入試教育業界だけである.
確かフランスでは,難関大学が共同で問題を作り,入試を行っているとか.
日本もそういう制度ができても良いのかも知れない.
アドミッションポリシー(こういう生徒に来て欲しいと,大学が宣言しているもの)ではなく,出題傾向や受験科目,もっと極端に言うと「偏差値」で大学を選ぶ,いまの日本の大学入試の歪みが解消できるかも知れない.
(異常な制度を後押ししているのが,私も属する受験サービス業界である!)
横浜国立大学の作った流れが,日本の大学入試を変えてくれる可能性を私は信じたい.
しかし・・・
大学の発表内容には「コロナの特別措置」と書かれているから,一過性のものになるかも知れない.
また,二次試験の得点の代わりに共通テストの点数を使うだけで,これまで以上に「丁寧な選抜」を行うというわけではない.
あくまでコロナ対応,入試改革を目指すものではないだろうから,まだまだ満足いく形ではないが,何かのキッカケにはなってくれるものと思いたい.
ちなみに,横浜国立大学以外も,出題範囲の変更や追試の実施など,対応が発表されている.
追試を実施するということは,問題をたくさん作るということ.
ミスも起きるし,公平性の問題も浮上するはず.
(共通テストの2回実施での問題の公平性も気になるところですね)
受験人数が少ないテストを実施すると, 公平性の問題はどんどん大きくなる.
過去記事にも書いた通り,倍率が3倍未満の大学入試では,大人数が含まれる偏差値54程度(各大学の受験者を母集団とした偏差値)が合否ラインになるので,1点の中にすごく多くの人が入ってしまう.
その中から「落とす人」を探すための理由を作るわけだ.
日本の大学入試は,大学に合う合格者を選抜する精度ではなく,教科学力と言う限定的で単純な物差しで,落とす人を探すものなのだ.
歪んだ日本の大学入試を改革できるチャンスは,コロナを利用するしかない!
※熱くなり長々と書いてしまいました.
最後までお付き合いいただき,ありがとうございました.
教育は世の中を作るものなので,多くの人に知ってもらいたい問題なのです.
過去記事で挙げた参考書籍: